さて、先日もこのブログで小中一貫教育の問題点などに詳しい山本由美さんの講演記録について紹介させていただきましたが、高円寺地域の学校問題の現状について触れていきたいと思います。
◇山田区政時代のお金が無いから学校統廃合、はウソ!
杉並区の教育委員会は山田区政時代からの学校統廃合の方針を未だ引きずった状態です。昭和50年代に比べ子どもたちが半減した、さらに区内の学校施設の更新時期でお金がかかると、財政危機論を振りかざして学校統廃合を進めようとしてきました。乱暴な言い方をすれば「子どもが減ってきてのだからそこにお金をかけるな」ということです。
しかし、その裏で山田区政はマスコミ受けを狙って「借金ゼロ政策」を打ち出し、毎年100億年近くを使って急いで返す必要もない金利の低い区債を前倒し返済し、あげく、区債が無くなったら今度は減税自治体構想で100年後に区税をゼロにするからと、毎年100億円の積み立てを行う、そんな政策を行ってきました。
計画的に返済が決まっていた区債を無理やり返すくらいなら、子ども達の教育費や福祉増進に回すことを考えればよかったんですが、それを行ってこなかった。結局、子ども達の事より、マスコミ受けする政策に力を入れてきたわけです。
この様に、山田区政時代に学校統廃合の方向性が出されてきましたが、区政が変わってその方向性がどの様になったかというと、いまだ大きな方針の変更は見えてきません。田中区政で学校希望制の廃止方針が出されましたが(これはこれで大きな前進なのですが)、学校統廃合方針を転換するほどの変化とは言い難い状況です。
◇高円寺地域の学校統廃合問題
高円寺地域には4つの小学校と2つの中学校が現在存在しておりますが、2010年に区の教育委員会はこの6校を2つの施設一体型小中一貫校に統廃合するという案を作り、地域に発表いたしました。
組み合わせは 「 杉四小 & 杉八小 & 高円寺中 の小中一貫校 」 と 「 杉三小 & 杉十小 & 高南中 の小中一貫校 」 というもの。以下は当時の資料です。
2010年(H22)年6月28日 高円寺地域の新たな学校づくりに関する意見交換会_説明資料
http://www.kyouiku.city.suginami.tokyo.jp/education/tekisei/pdf/kouenji/h220628_2.pdf
2010年(H22)年6月28日 高円寺地域の新たな学校づくりに関する意見交換会_概要
http://www.kyouiku.city.suginami.tokyo.jp/education/tekisei/kouenji_110222.html
この時の意見交換会に僕も参加しましたが、多くの方々が小中一貫校に疑問を呈し、明確に反対意見を述べる方もいらっしゃいました。しかし、意見交換会と銘打っておきながら学校統廃合を前提として、その後の学区をどの様に設定するかといった話しで進められ、疑問や反対が出ても「わかっていただけるまで説明する」といった区教委の姿勢に、住民の意見を全く聞く気はないのだろうかと驚かされました。
その翌年の2011年には「高南中学校の今後の在り方協議会」というものが設置され、「 杉三小 & 杉十小 & 高南中 の小中一貫校 」についての話し合いが行われました。
区教委は多くの区民に説明をするよりも少数の学校関係者を切り崩していくという形をとったわけですが、保護者や地元住民の方々の反対意見に押され、この協議会では 「生徒数などの推移を見守る」案 と 「再編成を具体的に検討開始する」案 の両論併記での報告となりました。この結果を受け、区教委側もいったん「 杉三小 & 杉十小 & 高南中 の小中一貫校 」については 「当面生徒数の推移などを見守ることとする」 という方針を出さざるをえませんでした。
で、区教委は杉三・杉十・高南がダメなら、杉四・杉八・高円寺中だけでもと、今年3月から杉四・杉八・高円寺中の3校の関係者からなる「高円寺地域の新しい学校づくり計画策定準備会」というものが設置させられ、区教委が作った施設一体型の小中一貫校を作るという「たたき台」を大前提に「話し合い」をさせています。
◇「高円寺地域の新しい学校づくり計画策定準備会」
この「準備会」については多くの疑問があります。まず、区教委が設置した正式な会議体ではないと言うのです。なので、区教委側は議事録などは提出できないとし、当日使用された資料についても、傍聴者は閲覧はできても持ち帰ることができないというのです。
設置主体がどこなのかを区教委に問い合わせしても明確な回答がないなか、各学校の学校長、副校長やPTA会長など各学校の関係者が集められて話し合いをさせているわけです。僕も傍聴に行ってきましたが、各学校の生徒数が少ないからこのままでは子ども達によくない、だから早く新しい学校づくりをしなくてはといった雰囲気がつくりだされ、「準備会」のメンバーとして参加されている方々は学校を無くさないでほしいという素朴な思いを声に出すことが、すごく困難な状況だと感じました。
さらに、7月31日の「準備会」では、ある学校の校長から 「先日、小中一貫教育”反対派”のお母さんたちから、責められました(笑)」 といった発言もあり、この集まり自体が学校統廃合の”推進”のために設置されたものでしかないとの印象を受けました。
区教育委はこの「準備会」の意見を聞いて、今年度末には「新しい学校づくりの計画素案」を作るとしているのですが、そもそも一部の学校関係者を集めての議論だけでは、各学校に関係する多くの方の意見は反映されないのは言うまでもありません。まして”反対派”といった言葉が使われるような偏った話し合いで出された結論を「地域の声」として区教委が都合よく扱う事は許されません。
区教育は今後11月と12月で「準備会」の議論終わらせ、その議論を受けて「計画素案」を作るとしておりますが、このままでは、この計画素案に高円寺地域の多くの方々の声が反映されない危険性があります。
この点を今月行われる第4回定例議会で追及し、杉八、杉四、高円寺中の存続と、現在各校で実施されている教育をさらに良くするような支援を区教育委が行うよう求めてまいります。
◆杉並区の教育に関わる基本方針などの資料
区教育が出している教育方針の資料などのリンクを貼っておきます。興味のある方はご覧ください。
◇小中一貫
【基本方針】
2009年(H21)9月 「小中一貫教育基本指針」(杉並区教育委員会策定)
http://www.kyouiku.city.suginami.tokyo.jp/education/pdf/ikkan.pdf
【策定済み計画】
2010年(H22)5月 新泉・和泉地区 小中一貫教育校設置計画(新泉小学校・和泉小学校・和泉中学校の統合)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/sinsen_izumi_syoutyuikkan_plan.pdf
◇学校適正配置
【基本方針】
杉並区立小中学校適正配置基本方針-適正配置基本方針全文-
http://www.kyouiku.city.suginami.tokyo.jp/education/tekisei/tekisei_kihon.html
杉並区教育委員会トップページ > 学校教育 > 学校適正配置 >
・現行の方針
2009年(H21)2月 杉並区立小中学校適正配置基本方針 (平成21年2月改定)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/tekise_hosin_h21kai.pdf
・過去の方針
2004年(H16)7月21日 杉並区立小中学校適正配置基本方針(平成21年2月廃止)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/tekise_hosin.pdf
2007年(H19)6月13日 小中学校適正配置のための再編構想(平成21年2月廃止)
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/file/tekise_saihenkoso.pdf
・元となった答申
2003年(H15)12月11日 杉並区立学校適正規模検討委員会―答申―「杉並区立学校の望ましい学校規模について」
http://www.kyouiku.city.suginami.tokyo.jp/sikumi/pdf/tekisei-toshin.pdf
※ちなみに、この適正規模検討委員会が出した答申の中で、一クラスの人数に言及した調査結果が有ります。P28~29の資料ですが、小中各教員の回答として、小学校では1クラス20~26名、中学校では14.5~19.1名となっています。現行の小学校34名、中学校40名に比べると大きな違いが有ります。こういった教員の声をきいて、少人数学級制を実施していくことが学校教育をよくしていくカギになるのではないでしょうか。